「のぞみ」再び

読売新聞に火星再挑戦、露探査機への同乗検討…日本の研究陣という記事が掲載されました。

以前火星付近まで行きながら、電気系統の故障主エンジンが使えず到達できなかった「のぞみ」で観測予定だった火星の大気観測を、ロシアの火星探査衛星に小型衛星を乗せてもらって運んでもらい実現しようと考えているみたいです。

これが実現できるとのぞみの無念が晴らせるかもしれません。ところで、


「のぞみ」の開発には200億円かかった。ロシア探査機に載せる小型衛星なら火星に到達する燃料が不要な分、安く上がる。製造費は10億円程度ですむという。(2004/7/3/16:20 読売新聞)
とあります。のぞみの観測装置が、火星の大気観測だけとは限りませんが、のぞみのほとんどの開発費は火星までの推進装置のためだったと言うことでしょうか。このあたりのノウハウの蓄積がまだ不十分なのですかね。

ところで、この記事ではこの計画を推進しているのが日本の研究者たちとなっていますが、日本の宇宙開発を担当しているJAXAはかかわっていないのでしょうか?。H2Aのほうで忙しのでしょうかね。

文民統制のわな

現在、米英の有志連合に参加する形でイラク人道支援を行っている自衛隊が、今後に展開される多国籍軍に参加することがほぼ決まったみたいです。

これについてはUnified Commandのもとに指揮される多国籍軍において、日本の自衛隊の指揮権がどうなるか問題となっています。"Unified Command"は「一つにまとめられた指揮権」と言う意味になります。

この「一つにまとまれらた」をどう取るのか、「統一」なのか「統合」なのか。自衛隊の指揮権は、「統一」ならば多国籍軍に存在する、おそらくアメリカ(とイギリス)が担当すると思われる、唯一の司令部が持ち、「統合」ならば多国籍軍に参加する国々の司令部の寄合が持つことになります。

政府としては「統合」であるとし、自衛隊の指揮権分は日本が持つ、としたいようです。しかし、様々な国々の軍で構成されている多国籍軍とは言え、一つの軍であり、一つの軍は一つの指揮権のもとにあるべきであるので、「統一」と考えるのが自然です。一つの軍にいくつもの指揮権があっては、ただの烏合の衆となってしまいます。

政府は国内で定めてきた憲法や法令よりも、国際情勢にあわせて行動を取りたがっています。情勢は常に変化するものですから、過去の条件で定めた規則を越えて行動すべき時もあります。しかし、この場合でも規則、憲法や法令、をすぐに改正して行かなければいけません。規則は行動の枷である、つまり暴走を防ぐための枷です。枷がない権力はかならず暴走を起こします。

武力と言う権力の枷が不十分であったために、軍部の暴走を引き起こしていた過去を反省して、文民統制と言う枷が生まれました。ここで言う文民は行政になります。日本では行政に対して憲法や法令と言う枷が与えられています。

もし、行政が憲法や法令と言う枷を振り払い暴走を始めたら、軍に対する文民統制は意味がなくなります。現場を知らない分、暴走を始めた行政が振るう武力は恐ろしいことになるかもしれません。

討論の能力

年金改革関連法案が成立しました。

この改正法に関しては紆余曲折のはてに与党が強行採決にもちこむ形となって成立となりました。この過程を見ていると、始めのうちは与党・野党とも法案を用意し討論をしていましたが、それぞれの案には、前提となる様々な予測値が信頼性がかけ、双方とも説得力が欠けていました。そのうち、年金未納騒ぎがおき、罵倒合戦になり議論にもならなくなりました。そして民主党が党首交代で混乱・迷走したあげく、与党の強行採決、野党の時間稼ぎ、野党欠席のなかでの成立となりました。

この国の議員たちは討論技術を持っているのでしょうか。どちらも持論を主張し、他を批判しているだけでは討論とは言いません。子供のけんかです。説得力がない持論では、相手が納得しません。国会議員なら国民を十分に説得する持論を持つのがあたりまえです。双方の持論の中でそれぞれが説得・納得したうえで歩み寄ることが討論だと思います。国会関連の報道を見るかぎり、まともな討論をしているとは思いません。

それとも、現在の国会の制度ではまともな討論ができないのでしょうか。そうであるならば、制度改革を行うべきです。

それと、年金改革関連法案だけでは無く、国会開催中には様々な法律が成立しています。政府広報オンラインの「法律・行政」には成立した法律について資料があります。これらの法律についても十分な討論が行われているのでしょうか。

対立する報道

朝日新聞産経新聞にウラン資源についての報道がありました。

朝日新聞は「ウラン資源量、270年分残存 核燃料サイクルに疑問符(朝日新聞5月24日付)」として、国際原子力機関(IAEA)と、経済協力開発機構傘下の原子力機関が共同で調査した結果ウランの推定資源量は270年分あると試算した、と報道し、この豊富な資源に対して日本の総額約19兆円とも言われる核燃料サイクル計画の見直しを提言しています。

これに対し産経新聞は「核燃料サイクル 資源無視した使い捨て論(産経新聞5月24日付主張(社説))」として、ウランは有限資源であり、世界中でいまのペースで使い続ければ六十年で枯渇するため、現在のウランの価格が比較的安価なことをとらえてウランの使い捨てを主張する人たちがいるが、核燃サイクルを推進するべきであると主張しています。

資源の有効活用もコスト削減も重要な話です。しかし、それぞれの話の根拠となっている推定資源量が270年と60年と大きく違うのはどうしてなんでしょうか。双方とも都合の悪い資料は使っていないのでしょうか。

探査機「のぞみ」の失敗の原因

日本初の惑星探査機「のぞみ」失敗に関する報告書を宇宙開発委員会がまとめたと報道がありました。

現在のところ朝日新聞と読売新聞が報道していますが、なぜか内容が違います。朝日新聞は「探査機「のぞみ」失敗は「偶発的故障」 原因特定は困難」として、電気回路のどの部品が故障したのかまでは絞りこめなかった、部品の偶発故障であろうと結論づけた、と報道しています。これに対し読売新聞は「火星探査機「のぞみ」の失敗、米国製バルブが原因」として、燃料供給システムで使われた米国製バルブの設計変更によって問題が発生する可能性を把握していなかったことが原因であると結論づけた、と報道しています。

マスコミが、とくに科学分野において、正確な情報を報道しないことがあります。それは担当記者のその分野での知識不足によるものですが、この件は知識不足と言う問題では無いでしょう。報告書の結論が報道機関によって異なる、とはどういうことなんでしょうか。

なお、当の宇宙航空研究開発機構のサイトには報告書はまだ掲載されていませんので、どちらの報道が正しいのかわかりません(そもそもどちらも正しくない可能性もあります)。

それはそうと失敗の原因はきちんと特定しておかなければいけません。そうしないと失敗を繰り返すからです。朝日新聞が報道した「偶発的故障」が結論ではいけません。宇宙開発委員会の方々はわかっていますよね。

著作権法改正

今、国会では著作権法改正が審議されています。この改正案では輸入CDの制限が盛り込まれています(参考:輸入音楽CDは買えなくなるのか?(By IT media)1回目2回目)。

これは海外にライセンスし作製され、現地の物価に合わせ、国内のCDより安いCDを日本へ逆輸入しないようにし、著作権者を保護する目的があるそうです。

でもおかしいとは思いませんか。海外で作製されるCDの著作権料はライセンス料として著作権者に渡っているはずです(そうでないとしたら問題ですし)。こまるのは国内レコードレーベルです。

さらにこの改正案では副作用として海外レーベルが作製した洋楽CDが輸入できなくなる可能性がありあます。こうなると国内で手に入る洋楽は国内レーベルが作製した再販制度に守られた高い価格のCDに限られます。

今回の改正案で、得するのは国内レーベルであり、困るのはユーザです。改正案の建前の対象である著作権者はさほど影響されません。著作権法で守られるのが著作権者ではなく、レーベルになってしまっています。

今、グローバル化、ネットワークの進歩などで、旧来の著作権の考え方が通用しなくなってきています。先日逮捕されたWinnyの作者は、この著作権法の見直しを目指してWinnyを作製したと証言しています。

著作権法を一から見直す時が来ています。

デフレ脱却

本日付朝日新聞社説「景気の課題(1)――腰据えた金融政策を」、読売新聞社説「[日銀物価展望]最後の一マイルでも緩和を忍耐強く」とデフレ脱却・景気回復に向けた動きに関する社説がでました。

このような記事を読んでいて気になることがあります。経済は需要と供給によって成立しています。これらの記事には景気対策として供給側への政策が書かれていますが、需要側にはあまり触れられていません。

現在のデフレは簡単に言うと供給が需要を上まわっているからです。これを修正するためには供給を減らす、需要を増やす、の二通りしかありません。供給を減らすことは経済規模を縮小することですので、景気対策としては需要を増やすことが重要となります。

多くの景気対策記事を読むと、どうも需要側を増やすことが抜けているように感じます。一部の記事には原価高騰による物価上昇でデフレ脱却をめざすようなことが書かれていましたが、それはおかしいのではないでしょうか。価格が上昇しても、消費者にとって欲しくないものはいりません。消費者が欲しいものだけが、価格が上昇しても売れると思います。

もっと消費者の購買する立場から景気対策を考えてみるべきではないでしょうか。